一般相対性理論
2008年10月9日木曜日
一般相対性理論(いっぱんそうたいせいりろん、独語:AllgemeineRelativitätstheorie、英語:General theory of relativity)は、一般相対論(General relativity)ともいい、アルベルト・アインシュタインが、1905年の特殊相対性理論に続いて1915年~1916年に発表した物理学の理論。ニュートン力学と比較す
ると、運動の速度が速い場合や、重力が大きい場合の現象を正しく記述できる。概要一般相対性原理と一般共変性原理および等価原理を理論的な柱とし、リーマン幾何学を数学的土台として構築された古典論的な重力場の理論であり、古典物理学の金字塔である。測地線の方程式とアインシュタイン方程式(重力場の方程式)が帰結である。この理論では、アイザック・ニュートンが発見した万有引力はもはやニュートン力学
的な意味での力ではなく、時空連続体の歪みとして説明される。一般相対性理論では、次のことが予測される。重力レンズ効果 -- 重力場中では光が曲がって進むこと。アーサー・エディントンは、1919年の皆既日食で、太陽の近傍を通る星の光の曲がり方がニュートン力学で予想されるものの2倍であることを観測で確かめ、一般相対性理論が正しいことを示した。水星の近日点の移動 -- ニュートン力学では説明不能だった水星軌道のずれが、太陽の質量による時空軸連続体の歪みが原因であることを示した。重力波 -- 時空のゆらぎが光速で伝播する現象。膨張宇宙 -- 時空は膨張または収縮し、定常にとどまることがないこと。ビッグバン
宇宙を導く。ブラックホール -- 限られた空間に大きな質量が集中すると、光さえ脱出できないブラックホールが形成される。重力による赤方偏移 -- 強い重力場から放出される光の波長は元の波長より引き延ば
される現象。時間の遅れ -- 強い重力場中で測る時間の進み(固有時間)が、弱い重力場中で測る時間の進みより遅いこと。一般相対性理論は慣性力と重力を結び付ける等価原理のアイデアに基づいている。等価原理とは、簡単に言えば、外部を観測できない箱の中の観測者は、自らにかかる力が、箱が一様に加速されるために生じている慣性力なのか、箱の外部にある質量により生じている重力なのか、を区別することができないという主張である。相対論によれば空間は時空連続体であり、一般相対性理論では、その時空連続体が均
質でなく歪んだものになる。つまり、質量が時空間を歪ませることによって、重力が生じると考える。そうだとすれば、大質量の周囲の時空間は歪んでいるために、光は直進せず、また時間の流れも影響を受ける。これが重力レンズや時間の遅れといった現象となって観測されることになる。また質量が移動する場合、その移動にそって時空間の歪みが移動・伝播していくために重力波が生じることも予測される。アインシュタイン方程式から得られる時空は、ブラックホールの存在や膨張宇宙モデルなど、アインシュタイン自身さえそれらの解釈を拒むほどの驚くべき描像である。しかし、ブラックホールや初期宇宙の特異点の存在も理論として内包しており、特異点の発生は一般相対性理論そのものを破綻させてしまう。将来的には量子重力理論が完成することにより、この困難は解決されるものと期待されている。万有引力の法則との関係アインシュタイン方程式は微分方程式として与えられているため局所的な理論ではあるが、ちょうど電磁気学における局所的なマクスウェル方程式から大域的なクーロンの法則を導くことができるように、アインシュタイン方程式は静的なニュートンの万有引力の法則を包含している。万有引力の法則との主な違いは次の3点である。重力は瞬時に伝わるのではなく光と同じ速さで伝わる。重力から重力が発生する。質量を持つ物体の加速運動により重力波が放射される。ここで、2.は光には無い性質であるが、重力の他に、弱い力(ウィークボソンが媒介する力)、強い力(グルーオンが媒介する力)も持っている性質である。3.は荷電粒子が加
速運動することにより電磁波が放射されることと類似している。これは、万有引力の法則やクーロンの法則に、運動する対象の自己の重力や電荷の効果を取り入れていることに対応している。
特殊相対性理論との関係
特殊相対性理論が、“加速している場合や重力が加わった場合を含まない特殊な状態”における時空の性質を述べた法則であるのに対して、一般相対性理論は、”加速している場合や重力が加わった場合を含めた一般的な状態”における時空の性質を述べた法則であり、等速直線運動する慣性系のみしか扱えなかった特殊相対性理論を、加速度系も扱えるように拡張した理論であると言える。対称性の視点からは、まず、特殊相対性理論は系のローレンツ変換に対する対称性により特徴づけられ、非相対論的極限によりニュートン力学の有するガリレイ変換が導かれる。一方、一般相対性理論は一般座標変換(diffeomorphism)に対する対称性により特徴づけられるアインシュタイン方程式を基礎方程式とする理論である。アインシュタイン方程式の有する一般座標変換に対する共変性は重力を小さくする極限のもとでローレンツ変換に対する共変性に帰し、一般相対性理論は特殊相対性理論を包含する。当然、古典力学も包含している。
量子力学との関係
量子論は一般相対性理論と同様に物理学の基本的な理論の一つであると考えられている。しかし、一般相対性理論と量子論を整合させた理論(量子重力理論)はいまだに完成していない。現在、人類の知っているあらゆる物理法則は全て場の量子論と一般相対性理論という二つの理論から導くことができる。そのため、その二つを導くことのできる量子重力理論は万物の理論とも呼ばれている。量子重力理論は、高エネルギーでかつ時空が大きく曲がっている系を適切に記述できるため、場の量子論と一般相対性理論では適切に議論することのできない宇宙創世初期の状態についても予測できると考えられる。量子重力理論の有力な候補としては、超弦理論がある。曲がった時空上の場の理論(Quantum field theory in curved spacetime)一般に場の量子論においては平坦なミンコフスキー時空における粒子を扱うが、重力の効果を近似的(半古典的)に背景時空(曲がった時空)として導入することにより場の量子論に曲がった時空の効果を近似的に取り入れたものである。重力子の影響を背景時空として近似しているため、強い重力場のもとでは時空を完全に量子化したような量子重力理論に修正されるべきである。欠点としては、時空が静的なものであるため完全には相対論的ではない。ホーキング放射はこの理論のもとで予測された。